マツムシの鳴き声の秘密!スズムシとの違いや「チンチロリン」の真相
秋風が心地よく吹き抜ける季節になると、草むらから聞こえてくる涼やかな虫の音。なかでも「チンチロリン」という軽やかで情緒ある鳴き声で古くから日本人に親しまれてきたのがマツムシです。
しかし、実際に野原に耳を澄ませてみると、「スズムシの音色とどう違うのか」「どの時間帯や草むらに行けば聞けるのか」と疑問を抱く方も少なくありません。本記事では、マツムシの鳴き声に隠された生態メカニズムから、スズムシやクツワムシとの聞き分け方、飼育時のポイントまでを分かりやすく解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:マツムシの「チンチロリン」という澄んだ鳴き声は、オスがメスを惹きつける求愛の摩擦音。
- 要点2:スズムシ(リーンリーン)とは生息環境が異なり、マツムシは日当たりの良いススキ野原や河川敷を好む。
- 要点3:活動ピークは9月中旬〜10月の夕暮れから夜間であり、外来種アオマツムシとの混同に注意が必要。
【風情の正体】マツムシの鳴き声はなぜ「チンチロリン」と響くのか?
童謡『虫のこえ』でも「あれ松虫が 鳴いている ちんちろ ちんちろ ちんちろりん」と歌い継がれているマツムシ。この独特なリズムを刻む音色は、オスの求愛行動によるものです。
マツムシのオスは、左右の前翅(まえばね)を垂直に近い角度まで立て、激しくすり合わせることで発音します。右翅の裏側にある「やすり状のヤスリ器」と、左翅の縁にある「摩擦片」が擦れ合い、翅の中央にある「鏡膜(きょうまく)」と呼ばれる薄い膜が共鳴板の役割を果たすことで、あの金属的で澄んだ高音が響き渡ります。
実際の人間の耳には「チッ・チッ・チッ・チロリン」「チョン・チョン・チョン・チロリン」と前奏を挟んでリズミカルに聞こえることが多く、この抑揚が古来「チンチロリン」という風雅な擬音語として定着しました。
【徹底比較】マツムシとスズムシの違い|姿・鳴き声・生息地の見分け方
秋の鳴く虫の代表格であるマツムシとスズムシですが、両者には生態や外見、好む環境において明確な違いが存在します。
1. 鳴き声と音色の違い
スズムシは「リーン、リーン」と連続的で艶やかな美声で鳴くのに対し、マツムシは「チンチロリン」と歯切れのよいテンポで鳴きます。音の高さや余韻の残り方もマツムシのほうが乾いた軽快さを持っています。
2. 体色とシルエットの違い
スズムシは黒褐色で平べったいスイカの種のような丸みのある体型をしていますが、マツムシは淡い黄褐色(茶褐色)で、全体的に細長くスマートなフォルムをしています。
3. 生息環境(草むら)の違い
スズムシが森林の縁や湿り気のある薄暗い草陰を好む一方、マツムシは河川敷や堤防、ススキが群生する乾燥した日当たりの良い草原に多く生息します。
【活動データ】マツムシが鳴く時期と時間帯|昼と夜でどう変わる?
マツムシの鳴き声を自然界で楽しむためには、活動が活発になる時期と時間帯を把握しておくことが欠かせません。
鳴く時期:8月下旬〜11月上旬
成虫が出現して鳴き始めるのは8月下旬頃からですが、声の勢いと風情が最も高まるのは9月中旬から10月中旬にかけてです。気温が下がり始める晩秋までその音色を響かせます。
鳴く時間帯:夕暮れから深夜
マツムシは基本的に夜行性です。日没直前の薄暮時(17時〜18時頃)から鳴き始め、周囲が暗闇に包まれる夜間に最も活発に鳴き交わします。曇天で薄暗い日や気温が高い秋口には、稀に昼間から声を聞かせるケースもありますが、本格的な大合唱は夜間に限られます。
【フィールド観察】生息地の草むらでマツムシの鳴き声を聞き分けるコツ
秋の野原でマツムシを探す際、最も役立つのは「周囲の環境」と「鳴き声の聞こえ方」の分析です。
マツムシは警戒心が非常に強く、人間の足音や草を分ける気配を察知すると、ピタッと鳴き声を止めてしまいます。そのため、観察の際は声のする方向に向かって静かに近づき、立ち止まって再び鳴き始めるのを待つのが鉄則です。
また、同じ草原には「ガチャガチャ」とけたたましく鳴くクツワムシや、「コロコロリ」「リーリー」と鳴く各種コオロギ類も混在しています。背の高いススキの葉上やススキの根元付近から、断続的で澄んだ高音(チンチロリン)がピンポイントで響いてくれば、それは間違いなくマツムシです。
【秋の鳴く虫一覧】日本を彩る風情豊かな鳴く虫の種類
秋の夜長を彩る日本の鳴く虫には、マツムシ以外にも個性豊かな種類が存在します。
・マツムシ:チッ・チッチッ・チロリン(澄んだ軽快な高音/草原)
・スズムシ:リーン・リーン(鈴を振るような艶やかな声/湿った草むら)
・クツワムシ:ガチャガチャ・ギィー(轡の音に似た大音量/藪・林縁)
・カンタン:ルルルルル…(「鳴く虫の女王」と呼ばれる繊細な連続音/草原)
・エンマコオロギ:コロコロコロリー(深みのある力強い音色/庭先・畑地)
・アオマツムシ(外来種):リーリーリー(樹上で大合唱する甲高い金属音)
近年、都市部の公園や街路樹で「大音量で騒がしく鳴く声」の正体は、外来種のアオマツムシです。アオマツムシは樹上に生息し、鮮やかな緑色をしているため、地上・草むらで鳴く在来のマツムシとは全く異なる生態を持っています。
【自宅で楽しむ】マツムシの飼育方法と綺麗な声で鳴かせるコツ
捕獲したマツムシや専門ショップで購入した個体を飼育し、室内でその鳴き声を楽しむ愛好家も増えています。
1. 通気性の良いケースを用意する
マツムシは湿気に弱いため、プラケースのフタをメッシュにするなど通気性の確保が最重要です。底には乾燥気味の赤玉土や園芸用マットを薄く敷き、足場として乾燥したススキの葉や枯れ枝を立体的に配置します。
2. バランスの取れた給餌
キュウリやナスなどの野菜に加え、市販の鈴虫の餌や鰹節、熱帯魚のフレークフードなど、動物性タンパク質をしっかり与えることで共食いを防ぎ、元気に鳴く活力を保ちます。
3. 鳴かせる環境の工夫
オスを複数匹(適度な距離感を保てる広さで)飼育すると、ライバル同士の張り合いによって鳴き交わしが活発になります。また、直射日光を避け、適度な風通しと昼夜の明暗リズムをつけることが美しい音色を引き出すポイントです。
【マツムシの鳴き声】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:昼間に街路樹から聞こえる大音量の鳴き声はマツムシですか?
A1:それは外来種である「アオマツムシ」の可能性が極めて高いです。在来のマツムシは主にススキ野原などの地表近くの草むらに生息し、昼間に街路樹の上から大音量で鳴くことはありません。
Q2:メスのマツムシも鳴くのですか?
A2:いいえ、鳴くのはオスだけです。メスには音を出すための翅の発音器や鏡膜が存在せず、オスの奏でる求愛の音色を聞き分けてオスの元へと歩み寄ります。
Q3:昔の日本ではマツムシとスズムシの名前が逆だったというのは本当ですか?
A3:本当です。平安時代の古今和歌集などの古典文学においては、現在のスズムシを「マツムシ」、現在のマツムシを「スズムシ」と呼んでいました。室町時代から江戸時代にかけて呼び名が入れ替わり、現在の呼称に定着したという歴史があります。
まとめ:秋の夜長にマツムシの音色を味わう
古来より日本人の美意識を刺激し続けてきたマツムシの鳴き声。その「チンチロリン」という繊細な音色は、オスの求愛にかける生命の躍動そのものです。
スズムシのしっとりとした鳴き声やクツワムシの迫力ある音とはまた一味違う、秋風に澄み渡る乾いた高音の響き。近くの河川敷やススキの生える草むらを訪れた際は、ぜひ立ち止まり、秋の夜長に響くマツムシの音色に耳を澄ませてみてください。 (出典: マツムシ の 鳴き声(Yahoo!ニュース))